特別支援教育に役立つ読書

知的障害のある児童生徒に毎日向き合うために役立った本たちです。教えをいただいた著作者の先生方に感謝を込めて。

入門ではない「行動分析学入門」

 この本で、「行動分析学」何たるかがわかる本だと思います。障害者支援の話は少なく、人や動物(おなじみのネズミさんやら鳩さんやら)いろいろな例から、「動物の行動人の行動、こうなってます」がよーくわかります。身近なエピソードからスタートし、そんなに難しそうには書いてなく、翻訳も素晴らしく、まったく違和感がありません。

心理学で「行動分析学ではわからない」的な批判がよくあるわけす。確かにその部分はあると思いますが、「ホントに勉強してわかって言っているの?」と思うことがあります。質の良い参与観察や当事者研究は素晴らしいのですが・・・。面白いけど自分の実践に生かすには、個別性が強すぎると思うことはあります。

行動分析学入門

行動分析学入門

 

全般を網羅しているだけに、 分量が多いのです。本を読むことは苦手ではないのですが、用語を覚え、理解しながら読み進めるのは根性が必要です。どうして読めたかというと、大学院の講義課題だったからです。予備知識なしでこれに挑んだので、かなり苦しかったのですが、何かあるとこの本に戻ることができるということで、大切な本です。

 

Principles of Behavior: Seventh Edition (English Edition)
 

 こちらが、最新版の英語バージョンです。日本行動分析学会の招致講演会でお話を伺い、当時の第5版を持参して、サインをいただきました。マロット先生は気さくな優しい印象の素敵な方でした。「これを英語で読みます」と先生にお話ししたのに、まだ・・です。日本語訳版は英語ペーパーバックの1/4のお値段!まず、日本語版ですよね。

メリットの法則:障害児教育にすぐ役立つ行動分析学

 障害児教育の心理学といえば、まず行動分析学、応用行動分析(ABA)なのですが、行動分析学はもちろん、一般社会にも使われるので、障害児教育に特化したわかりやすい本といえば、まず、これだと思います。

 行動原理だけではなく、エスカレートする行動問題、強度行動障害、不登校と障害児教育に関することを行動分析で読み解くとどのように解釈できるかが書かれています。わかりやすい。特に「行動の機能」①物や活動が得られる②注目が得られる③逃避・回避ができる④感覚が得られる、を明確に示してあり、行動分析を知らない人への説明もやりやすくなります。

 奥田健次先生、時々テレビのドキュメンタリーにも出演されていますが、学会でもはっきり物事をおっしゃるので、聞いていてエネルギーをいただき面白いです。セラピスト、幼児教育とその実践からくる説得力は、素晴らしすぎます。

「発達障害の人の就活ノート」軽度知的障害の高校生の就職の参考に

軽度障害の方々の就職機会は広がってきました。しかし、「障害がありますから」で配慮していただけることと、そうでないところがあります。障害特性を「強み」を生かすこと、できることに注目することを教育では重視しますが、会社に就職するにはそれだけでは通用しません。会社は利潤が得られなければ成り立たず、学校のような個別にカスタムした支援をするところではありません。人気のある、待遇のいい企業に入社するには、やはり勝ち抜かなければならないのは健常者と同じで、時給1,000円程度の給料に見合う仕事量がこなせなければ、就職するには困難です。

 

発達障害の人の就活ノート

発達障害の人の就活ノート

  • 作者:石井 京子
  • 発売日: 2010/07/07
  • メディア: 単行本
 

 アメリカの発達障害関係の就労本には、テンプル・グランデン氏をはじめ、才能を武器に仕事をしていく話が複数あるわけですが、日本にはそう簡単にあてはまりません。多少障害からくる困難があっても「一緒に仕事をしても大丈夫」と、職場の方々に思ってもらえるかどうかが、安定した職業生活を送れるかどうかを左右します。この本は基本的な情報全体を網羅していて、「そもそもどこから手を付けたら?」と思うとき、情報や現状を整理するのに役立ちます。

 

「9歳の壁」をこえるために・聴覚障害と認知の関係、しかしそれだけではない!

子どもは具体的内容しか理解できない段階から、小学校4年生、9歳くらいから徐々に抽象的な内容が理解できるようになるといわれていて、ここにギャップがあり「9歳の壁」と言われています。障害があると、社会からの情報の受け止めることができなくて認知の成長が妨げられることは、わかりやすい話です。しかし、実際のところ抽象的なことがわからないってどう行くこと?と思うわけです。「生活言語」と「学習言語」です。

 

「9歳の壁」を越えるために:生活言語から学習言語への移行を考える

「9歳の壁」を越えるために:生活言語から学習言語への移行を考える

  • 作者:脇中 起余子
  • 発売日: 2013/04/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 この本は聴覚障害の言語獲得の困難からくる認知発達の苦戦について、実に分かりやすく書かれています。脇中先生は聴覚障害者で、ろう学校の教員をしていらっしゃるので、当事者ならではのお話は、とても分かりやすく興味深く、一気に読める内容です。日本特殊教育学会のシンポジュームでも何回かお話を伺い、聴覚障害教育の特徴についての理解が深まりました。聴覚障害の観点から認知の発達と障害からくる情報の受け止めの困難を知ることによって、知的障害や肢体不自由、視覚障害にも共通することがあると思いました。また、言語習得のバイリンガル、ダブルリミテッドに通じる内容でもあります。

ロヴァス法による行動分析治療 自閉症児の教育マニュアル

 「自閉症は障害であって治らない」とよく言われるのですが、この本は「治療」となっています。自閉症を乳幼児の段階で疑ったり診断した場合、できるだけ早く療育プログラムを開始すると、改善がみられることが知られています。それを段階的に広く網羅したのがこの本です。ABA(応用行動分析)に基づいて自閉的な傾向を生かしながら、徐々に自分と外の世界をつないでいく指導が示されています。内容の断片を見れば、ほかのABAの本と同じようだと思うかもしれませんが、早期療育のパッケージとして、「治療」として段階的な子育てを提示してあるところがすごいのです。この本からもわかる通り、自閉症教育の重要な時期は6歳までで、小学校に入学してからでは、少し効果が薄らいでしまうようです。あー、だから、乳幼児教室や幼稚園や保育園の時期の特別支援教育をどうにかできないか、と思うのです。

 翻訳の中野先生は行動分析学の大御所でいらっしゃいました。学会でお会いした時に、何も知らない私は、ロヴァス法を知りたいけれど、日本語訳がないと難しいと、質問したことがあります。もうすぐ私が翻訳を出版しますからとおっしゃっていました。出版されたら、厚くて1万円を超えるすごい本で、やっぱり!と思いました。しかし、今から思えば、これはロヴァス法のエッセンスの一部ではないかと思います。自閉症だけでなく、乳幼児期の公教育の充実で、解決できる社会問題は、他にも虐待、愛着障害の予防などの家庭問題、貧困問題などあると思います。

900ページですが内容は実践本なので、難しくなく、興味のある部分からでも読むことができるので、おすすめです。

自閉症児の教育マニュアル

自閉症児の教育マニュアル

 

 

左利きの子がのびのび学習できる環境整備を

 

左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために

左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために

 

右利きが圧倒的に多い中、左利きの方々が日常的に感じる不便さを理解することは難しいことです。まして、子どもにとっては。紐の結び方、文字の書き方、ハサミ、包丁と様々な不都合さを少しでも快適にしていく方法について、写真付きで解説してあります。左手で右利き用のはさみを器用に使う生徒がよくいます。左利き用のはさみを右手で使ってみると、まったく切れませんから、その器用さって・・・。私たちの世代は、矯正され、両手が使える同級生が何人かいましたが、今から思えば、利き手が定まらないというのは、正中線交差にかかわる気を付けなければならない要素です。今は左利きを容認される良い時代だからこそ、支援を忘れてはいけないと思います。 

人を助けるということはどういうことか

 

 この本を開くたびに、自分の至らなさを思い知り、支援の名のもとに傲慢になる自分を情けなく思います。「支援する側は支援される側より上の立場になる」これ、である。支援者とクライエントの関係をいい状態で保つこと、チームでうまくやること、特別支援学校教員として必要なことばかりです。